奏手候単独企画『亜寡町エンタテイメント』記録

撮影:太田智子様



2015.7.18(土)
2015年年明け頃だったろうか。頭首が今度は大阪でワンマン公演をすると言い出したのは。
それも夏には決行すると言う。
確かに隔月で開催して来た稽古場公演の目的の一つは、ワンマン公演への準備であった。
我々自身が長時間の公演に対する稽古を積む事はもちろん、いつも応援して下さる皆様へ、本拠地京都だから出来る定期的な御礼公演という意図。
初めての方にも、投げ銭制の手軽さと稽古場という気軽さで、とにかく一度でも、気負う事なく奏手候の公演に遊びに来て頂きたい。知って頂きたい。
そして多数の出演者がブッキングされたイベントでは時間の都合上出来ない事の一つである、奏手候の眠っている多くの物語を聴いて頂きたいという想い。
それから身近に奏手衆に親しんで頂きたいという事。
新曲だって奏手候を応援して下さる皆様に一番に聴いて頂きたい。
そんな多くの想いがあった。

詰まる所、時は満ちた。十分に稽古場公演という「稽古」が煮詰められた。
頭首はそう思ったのだろう。

そこから7月までは通常運転を行いながら、4人で手分けして担当作業を受け持ち、あっという間の数ヶ月が過ぎて行った。
急ピッチで企画書を起こし、会場の手配、ゲストの方々へのオファー、特典の作成、装飾品などの買出し…と、とにかくやる事は山積みであった。
しかし奏手候という楽団としての運営形態もこの頃には成立していた為、全員がその状況すら楽しんでいる様に見えた。


今回何故大阪の中でも天王寺を選んだのか。天王寺Fireloopという場所。
一言で言うと、「信頼」という言葉が一番しっくり来るのではないだろうか。
このライヴハウスは、スタッフの皆さんが「精鋭」でいらした。
各部署一つも欠ける事なく、我々の一つ一つの公演に対して、プロフェッショナルな仕事をして下さった。
明るい雰囲気の中で、企画、音響、照明、バーカン、受付…全ての部署の方が、「真剣」で「責任ある」仕事を見せて下さった。

そうなると一瞬たりとも迷いはなかった。
何故なら今回奏手候がお客様に提供したかったのは、タイトル通りの「エンターテイメント」、そしてもう一つが「プロフェッショナル」だったからだ。

そしてお呼びしたのが各界の「プロフェッショナル」。

東京より、狐神楽の「吉原狐社中」様。
同じく東京より殺陣の「刃喰い」様。
関西からはベリーダンスの「杏慈」様。
妖怪ミイラ見世物の「ヲモカゲ一座」様。
展示には「夕焼けゑびす」様。
司会の「ねれゐ」様。

どの方もプロとして国内外で活躍されており、こんなに一同に集結して下さるというのは本当に奇跡の様な、そんな顔ぶれだった。
そんなプロフェッショナルしかいない集まりの中で、この単独企画をどうにか成功させなければならない。
お客様が見にいらっしゃる「プロフェッショナル」な「エンターテイメント」を完成させる、その「責任」はとても大きい物である。
しかしそのプレッシャーすら楽しんでしまっている様に見える程に、アメリカ公演を終えた奏手候は確実に強くなっていた。

そしてチケットの発売が開始された。そこから「SOLD OUT」を発表するまでは驚く程あっという間だった。



7月某日。魔のニュースを耳にする。

「台風」―。

日程を決める際に、もちろんそんな事は頭になかった面々。
下手をすれば単独企画当日に、直撃するかもしれないという事だった。

どうする―。

延期か…??

しかしこの全ての面子がまた一同に会する事は最早不可能である。
策が尽き、中止や延期を免れる事を祈るしかなかった―。


単独企画前日。その祈りを打ち砕く様に嵐が来た。
京都を代表する河川である鴨川や桂川も荒れ、電車などの交通機関もほとんど麻痺して行った。
そんな前夜、4人は稽古場に集まっていた。
そこにあったのは、僅かな希望である。
ネット上では、「奏手候のライヴがあるから台風来ないで!」「祈っています!」「台風一過で明日はきっと大丈夫!」「新幹線や私鉄は一部動いてる!」「タクシーもある!」…そんな温かいコメントやメッセージで溢れていた。
だから、絶対に我々が諦めてはいけないと思った。
東京から来て下さるゲストの方達も、「我々が祈願するのだから晴れるに決まっているじゃないですか」「行けますよ」などと明るくお客様や我々までを励まして下さっていた。


長い夜が明けた。


TVをつける。
天候はマシになっていた物の、京都線も環状線も私鉄の一部も、止まったままだった。
流石にこの時ばかりは一同息を飲んだ。
最悪の事態が頭をよぎる。

とりあえず一向は車で大阪へ向かった。
車内から会場やゲストの方々へ連絡を試みるが、何故か全て繋がらない。
心臓の音が聞こえた。

そして会場へ到着。
すると既に到着されていた方達のいつも通りの笑顔があり、その後も続々とスタッフやゲストの方々が来て下さった。
少しばかり胸を撫で下ろす。
お客様からもネットなどで電車の状況などを教えて下さる方が相次ぎ、話し合った結果全ての工程を30分ずつ遅らせる事にした。


そして、開場。
見ると受付前には既に列が出来ていた。

聞くと電車も復旧し切らず、皆さんタクシーや新幹線や飛行機まで使って来て下さったり、大回りをして動いている私鉄だけでどうにか来て下さった方、暑い中ひたすら歩いて来て下さった方、そんな方ばかりだった。
それなのに、皆さん満面の笑顔で入場して来て下さり、大変だったなんて一言も言わず、「楽しみにしてました!」「頑張って下さい!」、「暑いのでこれ皆さんで召し上がって下さい!」そんな温かいお言葉やプレゼントの数々までを、次々と下さった。
開演に間に合わなかった方もいらっしゃった。
それでも、キャンセルする事もなくほとんど全員のご予約の方がお越し下さった。

それに応える様に、亜寡町エンタテイメントは幕を開けた。
ゲストの皆さんも、スタッフの皆さんも、涙が出そうになるくらい、プロフェッショナルの本気を魅せて下さった。
奏手候も、第一部、第二部、ただただ皆さんの想いに応えようという一心だった。
それからあっという間の、4時間を越える亜寡町エンタテイメントの中身は、来て下さった方達の写真や記憶に残っているそれが、きっと一番だと思う。



こうして「亜寡町エンタテイメント」は、奏手候と、ゲストの皆さんと、スタッフの方々と、そしてお客様が完成させて下さった、かけがえのない素晴らしい作品となりました。
どう御礼を申し上げて良いのかわからないくらいです。
泣きたくなる様な温かい温かい愛情を、本当に、有難う御座いました!!!!!!!

撮影:太田智子様









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